このように、社内の資源配分を客観的に評価するには、社外の人間の目をフルに活用すべきだということである。 以上述べた取締役会の構成の問題のほかに、日本企業がビジネス環境の劇的変化に敏速に対応できないもうひとつの理由は、報酬体系の問題である。
欧米企業の場合、役員や事業部長クラスの報酬は、その5~8割は利益変動報酬となっているのが普通である。 固定給は2~5割ぐらいしかない(平均で37%)。
したがって、必要なリストラには手をつけず、ズルズルと自分の任期中は無事に過ぎればいいと手を抜いていると、もらえる給料は最悪で2割ぐらいにとどまる。 反対に、思い切った手を打ち、リストラが成功すれば、利益変動報酬がもらえる。
普通、それはふたつに分かれている。 ひとつは短期の利益変動報酬で、これは各決算期のROEなどの利益を基準にしたボーナス。
もうひとつは、ストックオプション(自社株購入権)などで、3年から5年という長期の利益変動(株価に反映)に対応した報酬(長期インセンティブ)である。 この短期と長期の利益変動と連動した形の報酬制度を採用することによって、業績が上がった場合には所得が増大するが、逆に、業績改善を達成できなかった経営者は、安月給に甘んじなければならなくなる。

後者の場合には、経営者が早晩罷免されることは確実である。 だからこそ、欧米の経営者は大なたを振るうことができる。
というより、大なたを振るわざるを得ない状況に追い込まれているのである。 もちろん、大なたを振るうことは、日本企業と同様、欧米企業であっても非常に苦しい選択である。
組織の変更、担当役員の解任、さらに事業撤退に伴う従業員のレイオフなど、改革には必ず痛みが伴う。 このため、当然強い反対もあるし恨みも買う。
しかし、それに手をつけなければ自分の立場が危うくなり、所得が激減する。 逆に必要な戦略を果敢に実行し、収益が上がれば大きな報酬が得られる。
こういう強力なインセンティブ・システムが構築されているから、CEOの立場にいる人間は、決断せざるを得ない。 アメリカ人は非情というのでなく、それを決断させるような報酬体系が彼らを突き動かしているのである。
ところが日本の場合を考えると、役員の報酬体系はほとんどが固定給と交際費などのベネフィットで構成されている。 固定給であれば、こういうリストラへのインセンティブが欠落したシステムのもとでは、当然ながら積極的なリストラが実現する可能性は低くなる。

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